みかん缶は、みかんの内皮がむかれた状態になっていますよね。皮のにがみがないので、みかんの甘みをより強く感じることができます。
みかんの内皮をむくために、通常は「希塩酸(薄い塩酸)」という薬品が使われています。塩酸と言えば、理科の授業で危険な薬品だと習ったものですよね。そのため、自然派志向の人には避けられることもあります。
この記事では、塩酸を使ってみかんの皮をむく仕組みや危険性があるかどうかを紹介します。また、一部の生協で販売されている、みかんの内皮みきに塩酸の代わりにクエン酸を使った商品も紹介します。
みかん缶の皮の溶かし方
みかん缶の皮をむくには、確かに塩酸が使われているのですが、その後の工程でみかんを水で洗いますので、製品に塩酸は残らないとされています。
しかし、実際には残っているのではないかと疑う人もいるようです。より詳しく説明すると、このような仕組みでみかんの皮がむかれています。
中和反応と水洗い
みかん缶に関しては、塩酸を使った後に、「中和反応と水洗い」が行われます。それが塩酸が残らないと言われている根拠です。
中和というのは、酸性の物質とアルカリ性の物質を混ぜることで、どちらの性質も持たない中性の物質にすることです。
理科の授業で習う有名な中和反応には、塩酸に水酸化ナトリウムを加えて、塩化ナトリウムと水を生成させるというものがあります。
塩酸は人体に有害なものですが、中和をすると塩の主成分である塩化ナトリウムと水に変わり、無害なものになるんですよね。
みかん缶では、塩酸につけた後の工程に、酸を中和するアルカリを加える工程と、水洗いの工程があります。中和で化学的にも有害な物質は残らないはずですし、水洗いをすることによって物理的にも洗い流されます。
塩酸は残っている?
中和に加えて水洗いまでしているのにまだ残留していたとしたら、それはアルカリ剤の量を間違えるなどの重大なミスがあった場合ではないでしょうか。
このため、「塩酸は残らないと言われているが本当は残っているのではないか」という不安は、私は持っていません。残っているという証拠があれば出てくると思うのですが、ないようなので、都市伝説的な不安のように見えます。
カップラーメンの容器に対して、容器の成分が溶けだしていると指摘されることがありますが、これを不安に思うのとは性質が違います。こちらは、溶けていること自体は事実で、メーカー側の主張が「溶けても問題ない」と主張しています。明確な有害性が指摘されていなかったとしてもプラスチック製品が口に入るのが不安という理由で問題になっているものです。
市販のラップも同様に、成分が溶け出る可能性はかなり高いが、口に入っても問題がないという理由で販売されています。
塩酸を使わない自然派みかん缶とは?
みかん缶の安全性についてはあまり心配しなくてもいいように思えますが、実は、製造過程で塩酸を使用していないみかん缶も販売されています。代わりに、安全な酸とされるクエン酸が使用されています。
理科の授業でみかんの皮をむく実験をすることもあるそうなのですが、その際は単体では危険物である塩酸ではなくクエン酸が使われることが多いそうです。
クエン酸を使うとドロドロに
自然派生協の生活クラブでは、塩酸の代わりにクエン酸を使ったみかん缶が販売されています。
ただし、このみかん缶、非常にまずいです。
クエン酸を使っているため、みかんの皮がうっすら残っています。また、この少し残っている皮に含まれるペクチンがシロップに溶けだし、粘度が出るそうです。
このため、皮が残っているためなんとなく苦くなり、ぬるぬるした食感になります。どちらもまずく感じる要素です。
カブス果汁を使った薬品不使用みかん缶
安全とはいえ、生活クラブのものはクエン酸を使っています。このクエン酸すら使わずに、「薬品不使用」をうたうマニア向けみかん缶もあります。
酸味が強いため生食用としてあまり使われていない柑橘類である「カブス」(カボスではないです)を使って皮をむいたみかん缶があるそうです。
ここまでくると、「そんなに薬品が嫌なの!?」と驚いてしまいますが、大手メーカーの国産みかん缶と比べて2倍程度のお値段で収まっているので、気になる方は買ってみてもいいかもしれません。
こちらはまだ食べたことがありませんが、内皮が残っているのが特徴ですので、クエン酸使用の缶詰と同様に、ドロドロ・ぬるぬる系だと思われます。
シロップの甘みが少ないことも
果物の缶詰は、どれも糖分多めで健康にはあまりよくないです。そのため、自然派みかん缶はシロップの甘みを抑えてあることも多いです。
生活クラブのみかん缶の原材料を、はごろもフーズの「国産みかん」と比較してみました。
生活くらぶ | みかん(国産)、みかん果汁(濃縮還元)、砂糖/酸味料(クエン酸) |
はごろもフーズ | みかん(国産)、砂糖・ぶどう糖果糖液糖/クエン酸、香料、糖転移ビタミンP |
はごろもフーズは、みかんの次に配合量が多い成分が砂糖であることがわかりますね。一方、生活クラブの方はみかんの次に配合量が多いのがみかん果汁になっています。生活クラブによると、みかん果汁は50%だそうです。
みかんジュースでも糖分は入っていますが、砂糖が第二成分になっている一般的なみかん缶よりは、糖分過剰摂取のリスクは少なくなるというメリットがあります。
しかし、甘みが抑えてあるために余計に味がおいしくなく感じてしまうこともありますので、味重視の方には向かないかもしれません。
塩酸不使用みかん缶食べ比べ
塩酸を使わないとドロドロ・ぬるぬる系になりますので、味がおいしくないのははっきりしているのですが、一応食べ比べをしてみました。
近所のスーパーに売っていた一番安いみかん缶と、はごろもフーズの「国産みかん」、生活クラブのみかん缶を食べ比べしてみました。
それぞれの100グラムあたりの価格はこのようになっています。
商品名 | 100グラムあたりの価格 |
トップフード みかん缶 | 32円 |
はごろもフーズ 国産みかん | 97円 |
生活クラブ みかん缶 | 168円 |
値段の違いの理由は?
驚きましたが、安いみかん缶と比較すると、生活クラブは5倍以上の価格になっていますね。イオン系のスーパーで売っていたトップフードのみかん缶が異様に安いのもあると思いますが、、、。
値段差の原因を推測してみると、トップフードのみかん缶は、みかんを中国で缶詰に加工したものを輸入しています。みかんもおそらくは中国産で、原材料が安いのと、加工の手間賃も安いことで爆安になっているものと思われます。
一方、はごろもフーズの国産みかんになると、原材料は国産で、加工も日本でやっています。そのためお値段が100グラムあたり97円にアップし、トップフードよりもかなり高くなります。
生活クラブのみかん缶は、はごろもフーズの国産みかんのさらに1.5倍以上の価格なのですが、ここまで高い理由は正直よくわかりません。
薬剤を普通とは変えていること、シロップもみかんにしていることでコストは上がるとは思いますが、ちょっと高すぎな感もあります。特に、中和と水洗いで残留しないのだったら塩酸を使っていても気にしない派の人からすると、割高感は強くなるでしょう。
しかも味がまずいですからね(笑)
甘いトップフード、シャキシャキしたはごろもフーズ
トップフードとはごろもフーズの味も、結構はっきり違います。トップフードはみかんの酸味というのがほぼ消されていて、甘いです。食感はふにゃっとしています。
一方はごろもフーズは、食感がシャキシャキしていて、新鮮な感じがします。缶詰なのでどれも新鮮ではないわけですが、イメージで、、、。また、酸味は結構はっきりしています。
子供にはトップフードの方が好まれるかもしれませんが、大人、特に砂糖摂取量を気にする方ははごろもフーズの方が向いていると思います。
トップフードも、まずいと感じる要素はなかったです。ただ、中国原産(たぶん)・中国加工ですから、不安に感じる方は「国産みかん」と書いてある製品を買った方がいいでしょう。
我が家は塩酸みかん缶を買う
自然派食品は、スーパーの商品と比べて非常においしいものと微妙にまずいものが混じっています。まれに、非常にまずいものがあるのですが、塩酸不使用みかん缶のまずさは結構激しいです。
実家の母親がガチガチの無添加志向だったので、グリーンコープという自然派生協の食品を子供のころから食べさせられていました。
小学生のころ、「みかん缶は塩酸という薬品を使って皮を溶かしている」という話は聞かされたものの、たまにみかん缶を買うときは、グリーンコープではなくスーパーで買っていたと思います。
なぜみかん缶はスーパーなのか、母親に聞いたことはありませんが、やはりクエン酸使用のみかん缶はまずいと思っていたのかもしれません。
ただ、いい点もあります。シロップの砂糖が少ないことが多いので、そのまま飲みやすいです。
中国産の激安みかん缶はやはり漠然と心配な面がありますので、バランスがいいのははごろもフーズの国産みかんかなと思います。