「自然食レストラン」を名乗っているところに行ってみると、野菜メニューが多く肉メニューが少ないだけで、野菜の製法や添加物へのこだわりなどが特に見られないことがあります。
「自然食=野菜」ではないと思うので、そういうレストランには違和感を感じますね。ただ、自然食の定義もはっきりしないので、「それは自然食ではない」とも言えない状況です。
確かに、自然食では特に野菜を推奨しているように見えることもあります。しかし、それは別に肉がダメ(ベジタリアン)というわけではないんです。
今回は、自然食と野菜の関係について考えてみました。
そもそも自然食とは?
自然食とはなにか?という、定義ははっきり定まっていないです。
コトバンクの解説を見てみても、「基準はない」とされています。
山野や海などに自然に育った材料を使った食品、あるいは無農薬・無化学肥料の栽培食品をいう。食品工業や化学の発達により、食品の加工、化学薬品の使用、あるいは人工的な手段を用いたハウス栽培などでつくられる食品に対し、健康や環境汚染を配慮した食品が求められるようになった。しかし、法的にも、食品学的にも、自然食品を決める基準はなく、どちらかというと観念的に分類されていることが多い。
しかし、肉も魚も「自然」のものですから、特に野菜のみ食べるベジタリアンの考え方とは別だといえます。
「昔からの方法」というのが評価される傾向があるので、肉も魚も、昔からあったものは食べるのがむしろ自然です。
しかし、昔の日本人は肉も魚もそれほど食べていませんでしたよね。近代以降に食生活が変わったことを問題視する人もいます。
「西洋型」の食事がダメ
「動物がかわいそうだから野菜を食べる」という考えを持っているとは限りませんが、自然派志向の人の中には「肉を減らして野菜を増やそう」と考える人は多いです。
現代風の食事のことを、肉などが多すぎる「西洋型の食事」などと言って批判することもあります。特定の地域を否定するとイデオロギー的な要素があるように感じられるのですが、本場の西洋であるアメリカでも、「西洋型の食事」のリスクを指摘する調査結果などが出ているようです。
農林水産省・食事バランスガイドを見ても、1日に必要な肉・魚の割合は結構少ないですよね。この量以上食べている人も結構多いのではないでしょうか。
ガチガチの自然派だった実家では、この通りのバランスの食事が出ていましたし、DHAなどが含まれて肉よりいいとされる魚が中心でした。なので、子供目線では肉がもっと食べたいなという気持ちになっていました。
どっぷり浸かるとベジタリアンになりがち
「自然な食事」には肉を食べることも含まれるのですが、自然派的な食生活について知識が増えれば増えるほど肉を食べたくなくなってしまうという現象が起きることもあります。
日本ベジタリアン協会によると、ベジタリアンの現状はこのようなものだそうです。
現在、ベジタリアンの定義は流動的である。英国では畜肉を食べない人を広義なベジタリアンとする傾向がある。宗教的教義、栄養や健康の保持、生命の尊厳を旨とするアニマルライツのほかに、環境問題や食料問題、すなわち、地球環境保全や途上国援助のために菜食のライフスタイルを選択する新たな地球市民型ベジタリアンが増えつつある。
日本ベジタリアン協会
特に、「アニマルライツ」と「環境問題」です。
アニマルライツ(動物福祉)
知名度のある自然派食品といえば、「平飼い卵」です。イオンのプライベートブランド「トップバリュ」でも売っています。
「平飼い」ってなに?ということを調べる過程で、普通の鶏の飼育方法(ケージ)を知ることになります。
すると、結構な確率で「身動きの取れないケージに閉じ込めてひたすら卵を産ませ、卵が産めなくなったら残酷な方法で殺して鶏ガラスープの原料に使う」みたいな内容を生々しく書いた記事が目についてしまうのです。
豚も同様で、「母豚を檻に閉じ込めて身動きが取れないようにする」のような記事がたくさんあります。
そういう記事を読んでしまうと、「お肉おいしい!」と純粋に楽しみにくくなり、肉食に対してネガティブな見方を持つようになってしまう人も一定数いると思います。
自然派志向の人は、一般の人よりこういう記事を目にする確率が高いので、その分ベジタリアン的考えになってしまう確率も高くなると思われます。
環境問題
自然派食品を売っている企業や生協は、同時に環境問題も重視していることが多いです。
そのため自然派食品を食べていると環境問題の知識も自然に大きくなりがちなのですが、その過程で「肉食は環境に悪い」という視点を知ってしまうこともあります。
肉食が環境に悪いという点で一番問題になるのは牛です。牛は鶏や豚と比べて、長い期間育てなければ食用にできるまでに育ちません。また、体重を1キロ増やすのに必要な飼料という観点からも鶏や豚と比べて効率が悪いそうです。
例えば世界が食糧危機になったら、牛にあげている飼料をそのまま食べればより多くの人の食糧をまかなえるわけで、そういう意味で牛は効率が悪いということですね。
また、畜産業による温室効果ガスの排出も問題になっているそうです。
「自然食レストラン」ランキングには微妙なものが多い
「自然食レストラン」で検索すると、ランキング形式のまとめ記事が出てくるのですが、自然食の基準がブレブレで参考になりません。
例えば1位に「東北牧場」が入っていますが、これはメニューの一部に自社牧場の無農薬野菜を使っているだけで、ほかのメニューは特に自然食にこだわっている感じでもなくごく普通のホテルビュッフェです。
メニューが野菜なだけで、添加物の使用についてや有機野菜かどうかについては触れていないレストランも入っているようです。
「玄米 レストラン」で検索した方が、より添加物や有機野菜にこだわっているレストランが見つかる可能性が高いかもしれません。