「生協は共産党系の団体なのか、さらに詳しく考えてみた」という記事を書いたところ、「生活クラブ 共産党」で検索してこのブログを見た方がかなりいるようですので、特に生活クラブについて、共産党との関わりがあるかを調べてみました。
生活クラブの創業者は社会主義活動をやっていた方ですし、生活クラブもそれは隠していません。テレビの取材や本などでもオープンにしています。
ただ、数十年前は社会主義活動をやっていた人がもっとたくさんいて、今よりももっとメジャーな存在でした。そういう人たちが全員共産党とつながりがあるかというとそうではなく、現在は社民党となっている「社会党」とつながりがあった人もいます。
生活クラブの創業者は、左翼傾向があることは確実ですが、共産党ではなく社会党の方とつながりがあったそうです。
この記事では、生活クラブの創業者の経歴や、左派新聞に掲載された内容、より左派オーラが強い生協であるグリーンコープとの比較から、生活クラブと共産党にかかわりがあるかを考えてみます。
生活クラブ創業者は共産党と関わりがある?
生活クラブ創業者である岩根邦雄夫妻さんが社会運動をしていたことは、生活クラブの公式サイトのコンテンツでもちょくちょく触れられていますし、隠されていることではありません。
「生活クラブという生き方――社会運動を事業にする思想」という本まで出しています。
しかし、どの系統の社会運動だったのかはネット上の情報ではわからなかったので、(失礼ながら全く興味のない)この本を買って読むしかないのか、、、と思っていたところ、テレビ東京の取材でどの系統か明らかにされていたのを見つけました。
生活クラブの設立は1965年。社会党系の政治活動に絶望した岩根邦雄夫妻と19歳の河野英次の3人が創立メンバー。
この情報によると、共産党ではなく、現在は社民党となっている「社会党」の系統だそうです。
共産党を危険視する人がいる理由の一つに、国の機関である公安調査庁から正式に調査対象団体にされていることがあります。社民党に関してはそういうことはありませんので、思想的には他の政党と比較すると近い位置にいるにもかかわらず、社民党とのつながりを気にしている人は少ないようです。
共産党は,第5回全国協議会(昭和26年〈1951年〉)で採択した「51年綱領」と「われわれは武装の準備と行動を開始しなければならない」とする「軍事方針」に基づいて武装闘争の戦術を採用し,各地で殺人事件や騒擾(騒乱)事件などを引き起こしました(注1)。
その後,共産党は,武装闘争を唯一とする戦術を自己批判しましたが,革命の形態が平和的になるか非平和的になるかは敵の出方によるとする「いわゆる敵の出方論」を採用し,暴力革命の可能性を否定することなく(注2),現在に至っています。
こうしたことに鑑み,当庁は,共産党を破壊活動防止法に基づく調査対象団体としています。
生活クラブの創業者は社会党系であり、しかも、「社会党系の政治活動に絶望」して生活クラブを始めたわけなので、現在共産党と強いつながりがあるとは考えづらいのではないかと思います。
生活クラブは左翼活動が活発、でも共産党とは限らない
創業者の岩根邦雄さんは割と早くに第一線は退いています。理事長を務めていたのは81年までで、その後は生活クラブの顧問となっているそうです。
しかし、生活クラブは現在も左翼活動を活発に行っています。
今回初めて知りましたが、生活クラブグループに「一般社団法人市民セクター政策機構」という団体があるそうです。
生活クラブがどの程度お金を出しているのかはわかりませんが、組織概要を見てみると「グループ全体のシンクタンク」ということなので、結構がっつり関わりがあるのかもしれません。
市民セクター政策機構は、生活クラブ生活協同組合グループ全体のシンクタンクとして活動しています。組合員、役職員、提携生産者、趣旨に賛同する人々が会員となり、会費制で運営されています。
2017年5月23日に生活クラブ公式サイトで「共謀罪」に反対する声明が出されていますが、一般社団法人市民セクター政策機構でも同日に同じテーマの声明が掲載されているので(中身は準備中となっていましたが)、おそらくこのような声明の文言を考えるための団体なのではないかと思います。
ただ、あまり活動は活発ではないようです。ニュース一覧を見てみたところ、年に1、2回しかニュースが更新されていません。過去にニュースとして配信されたものを見てみると、左翼オーラはすごいですね。
- ■緊急署名 「相模原市・反差別条例の制定」にご協力ください!
- ■2022年6月~7月【ご案内】法政大学・連帯社会インスティテュート・オンライン公開講座
- 【予約受付中! 2022年3月28日発売】藤井敦史氏編著(当機構理事)新刊『地域で社会のつながりをつくり直す 社会的連帯経済』
- ■2018年4月「わたしたちが関心のある社会問題はこれだ!!―2019 年統一自治体選挙に向けてその争点を探る― 」アンケート調査結果
- ■2017年5月23日 声明:共謀罪(テロ等準備罪)に反対する声明
- ■2017年1月31日付け「琉球新報」に『社会運動』(425号)が紹介されました。
- ■2015年11月10日 声明:国会におけるTPPの批准に強く反対します
- ■2015年9月15日 声明:安保関連法の国会での採決に抗議し、即時廃止を強く求めます
反差別、連帯、共謀罪反対、安保関連法反対、、、左翼的テーマしか見当たりません。結構ガチな印象を受けました。
グリーンコープも同じようなテーマを取り上げています。
生協がみんな左翼なわけではない
体感としては、食品の安全性に対するこだわりが上がれば上がるほど左翼活動もガチになっていくように思います。
スーパーとの差があまり感じられない品ぞろえのコープデリ連合会だと、社会的な活動はSDGsが中心で、左派感は薄くなっています。SDGsは最近のはやりなので、普通の企業でもやっています。
しかし、生活クラブと同様に食品の安全性へのこだわりが強いグリーンコープは、かなり力を入れて左翼活動をやっているようです。
生活クラブと共産党は関係なし
左派系新聞の人民新聞社が1999年に書いた記事によると、設立時に共産党と関係がある生協は多いと書かれています。しかし、生活クラブは違うと書かれています。
◇70年代に入り、大学生協を基盤にそれぞれが地域生協へ展開。日共系は「市民生協」を全国的に組織化。
(日本生協連の主流である「神戸灘生協」はこれとは流れの異なる別格、また「生活クラブ」生協なども同様だが、ここではそれは省略する。)
元日本生活協同組合連合会常務理事の斎藤 嘉璋さんが書いた記事でも、1970年代に大学生協が支援して市民生協を設立したという記載がありますし、学生運動が盛んだった時期に大学生協が支援してできた生協には、共産主義の影響を受けているところもある可能性が高いように見えます。
1960年代の洛北,札幌市民,所沢の3生協をはじめとして大学生協が支援する “ 市民生協 ” づくりが69年の新設生協12組合から,70年代に本格化して70年から75年で85組合,70年代で120組合が設立された。
しかし、すべての生協がこの時期にできたのではなく、もっと古くからある生協もあるようです。日本生協連の資料によると、生協の成り立ちというのはこのようなものらしいです。
生協が本格的に全国に広がったのは、1919~22年(大正 8~11年)にかけてのことでした。 大正デモクラシーと呼ばれる社会 情勢の下、労働運動の高揚の中で、 1920年に東京の共働社、大阪の 共益社など労働者生協がつくられ、市民型生協としては、 1919年に 東京の家庭購買組合、1921年には神戸購買組合、灘購買組合(ともに 現・コープこうべ)などが設立されました。
(中略)
1945年の東京、大阪、神戸をはじめ とした全国各地への空襲は、 生協に壊滅的打撃を与えました。 終戦まで生き 残った生協はごくわずかでした。
(中略)
全国各地で生協の再建と新設の動きが広がり、1946~47年にかけて、食料調達のための新しい生協が”雨後のたけのこ”のように設立され、6503組合、組合員数は197万人を数えました。
戦争によって一旦つぶれてしまった生協が、戦後に復活したという流れですね。戦前の生協も「労働運動の高揚の中で」設立されたそうですし、生協そのものが、もともと共産主義との相性はいいのだと思われます。しかし、現在の日本共産党と直接関係があるかどうかは別に考える必要があります。
生活クラブの設立年は1965年なので、時期的に見ても大学生協が支援したタイプとは違うように見えます。
生活クラブとグリーンコープを比較
「グリーンコープは共産党と関係ある? 左派新聞で真相を徹底調査」という記事で、「グリーンコープは共産党とのつながりはなさそうだが、左派的思考に基づいて運営されていることは確実」という結論になりました。
共産主義団体は今は日本共産党くらいしか大きな勢力を維持している団体がないのですが、昔はもっといろいろあり、グリーンコープは日本共産党と仲が悪かった派閥と関係してそうだという意味での、「共産党とのつながりはなさそう」という結論です。そのため、左派のオーラは非常に強いです。
このグリーンコープと比較すると、生活クラブの左翼的な活動はどのようになっているのでしょうか?
平和活動はマイルド
あまり知られていないですが、平和活動をしている生協は多いです。
ただ、あまり反発の出ないジャンルに限定している生協が多いようです。
反発の出やすいジャンルとは、「日本は戦争で悪いことをした。なので近隣諸国に謝罪すべし」「その反省に基づいて自衛隊の軍備拡張を阻止すべし」「近隣諸国と友好関係を築くべし」というようなもので、逆に反発の出にくいジャンルとは、「広島・長崎の原爆被害を繰り返してはならない」「世界から紛争をなくそう」「戦争によって市民の日常生活が破壊される」みたいなものです。
グリーンコープはこの方向での活動のようで、「日本がかつて戦争を発動したという事実を踏まえて」の不戦決議、「過去の日本の侵略の歴史を正しく知る機会とする」韓国への旅などが平和活動に含まれます。
平和活動の位置づけも大きいようで、トップページから表示できる「グリーンコープの取り組み」の中の1項目として入っています。
一方生活クラブは、平和活動を少しやってはいるものの、活動のメインではないようです。トップページからみられる「活動・とりくみ」の中に「社会とくらしを支えるとりくみ」という項目があり、その中のさらに「社会への意見表明と働きかけ」の項目の一部として、ウクライナへの軍事進攻に反対する声明などを出しています。
共産党は反戦活動に熱心ですから、平和活動の比重が小さければ、共産党とのつながりは薄そうに見えます。
生活クラブはおいしかったら買えばいい
個人的には共産党とのつながりがあるかどうかは気にしていません。おいしいものをそこそこの値段で提供してくれるなら、それで得た利益は好きに使ってもらっていいと思っています。(生協は組合員が作るものという建前なので、そういう意味では好きに使われると問題かもしれませんが)
長年生活クラブを愛用していましたが、実際おいしいのか食べ比べて検証してみると、まずかったものもありました。
例えばみかん缶は食べるのが苦痛なレベルでまずいです。みかんの内皮むきに塩酸を使うのを避けるために、それより溶かす力が弱いクエン酸を使っているため内皮が残ってドロドロとしていて、視覚的・食感的に腐ってる感じがしてしまいます。
最近はおいしっくすなど生協以外のサービスで食品の安全性に気を遣っているものも多いので、値段や味を比べてみて、自分に合ったものを使うのがおすすめです。