小学校2年生のとき、遊びに行った友達の家でとても恥ずかしい経験をしたことがあります。友達のお母さんが「カップラーメン食べる?」と聞いてくれたのですが、実家の母親がガチ無添加ママだったため、カップラーメンは食べることを禁止されていたものだったのです。
大人であれば、お腹がすいていないなどの理由でごまかすことができるのですが、なにしろ小学校2年生だったので、筆者の親が普段言っていることを正直に答えてしまったのです。「カップラーメンは容器の発砲スチロールから有害物質が溶け出すから食べてはいけないと親に言われている」と、、、。
言った直後、もしかして失礼なことを言ってしまったのではと不安になったのですが、幸い優しいお母さんで、「そんなこと気にしていたら何も食べられなくなるよ(笑)」と明るい感じで流してくださいましたが、、、。
20年ほど前から存在した、「カップラーメンの容器から有害物質が溶け出す」説は、最近はあまり耳にしません。容器の原材料をより安全な変更したメーカーも多く問題自体が小さくなったのと、はっきりとした有害性の根拠が示されていないことが大きいのではないかと思います。
しかし、一部が溶け出していてそれが口に入っているのは事実ですので、一部で論争は続いているようです。
最近はまた別の問題として、カップ麺にお湯を入れる際に、よりおいしくしようと油を足すと、底が抜けるレベルで容器が溶けてしまう問題も出てきているようです。
この記事では、カップ麺の容器が溶ける問題の最近の状況について紹介します。
話題になったのはかなり前
カップ麺の容器が溶ける問題は、今アラフォーの私が小学生のころに問題になっていました。
1998年に、環境庁が「環境ホルモン」と呼ばれる危険性のある物質がいくつかリストアップしました。この中にカップ麺の容器の素材が含まれており、消費者団体が溶け出ていることを指摘したことが発端で大きな問題になったそうです。
その当時、安全性について一応決着したことになっていますが、消費者目線で考えるとかなり不安の残る決着方法でした。
不安の残る決着
日清によると、このような経緯になったそうです。
・健康への影響がないことは日清食品中央研究所が確認済み
・2000年に、環境庁がカップ麺容器の素材に含まれるスチレンダイマー、スチレントリマーを環境ホルモンリストから外すことを決定し、環境ホルモン疑惑は払拭された
カップラーメンメーカーが圧力をかけて環境ホルモンリストから外したのでは、、、と思ってしまいますよね。
溶け出ていること自体は日清も否定していないですし、東京都健康安全研究センターなどの試験で明らかに認められています。
容器の素材を変更
容器の素材を変更したメーカーもあるようです。
日清は表面をポリエチレンでコーディングした紙を原料にしています。
表面でもついているのは心配になりますが、ポリエチレンは、カップ麺容器から溶け出すのが話題になった当時に使用されていたポリスチレンよりは安全な物質とされているようです。
徐々に安全な容器に切り替えられているようですが、現在でも一部のメーカーはポリスチレン製容器を使っています。
ポリスチレン容器が溶ける問題
最近では、「カップ麺をおいしくするために、お湯と一緒に油を入れると容器が溶ける」という話の方が有名になっているようです。
このように底まで溶けることもあるようで、衝撃ですね、、、。底まで溶けていたら、間違えて食べてしまうことはないと思いますが、ギリギリ底が抜けないもののがっつり溶けていた場合はこわいですね。
出典)国民生活センター
この問題が起きるのも、環境ホルモンで話題になったポリスチレン容器だそうです。
今でも話題になるほどにはポリスチレン容器を使っているメーカーがあるということですね。
後入れではありますが、カップ麺には油が添付されていることもありますし、油がすべてダメというわけではないようです。しかし、中鎖脂肪酸を多く含む油ではこうなってしまう可能性が高いそうで、具体的にはMCTオイル、ココナッツオイル、えごま油、アマニ油などだそうです。
写真は、中鎖脂肪酸100%のMCTオイルを加えた場合なのでがっつり溶けていますが、ほかの油では漏れない程度に変質することもあるそうなので、より心配になります。
カップ麺の容器が溶ける問題の最近の状況
油を足していないケースでカップ麺の容器が溶ける問題は、現在でもたまに、海外発の研究の翻訳を中心に紹介されることがあるようです。
しかし、本当にたまにです(笑)
まだ発砲ポリスチレン製の容器は一部では使われているものの、エコの観点からも容器自体が紙製などに変わる流れがあります。
時間とともに消えていく話題なのかもしれません。
NEWSポストセブンの記事
最近では、2022年のNEWSポストセブンで、「ペットボトル、カップ麺など、食品の容器から有害物質が溶け出すリスクはあるのか」という記事が出されています。
その記事では、このようにやはり有害物質が溶けだしているという主張を紹介しています。
今年1月、ノルウェー科学技術大学准教授のマーティン・ワーグナーさんらのチームが「ペットボトルやプラスチック製品に含まれる化学物質が飲料や食品に溶け込み、肥満リスクを上げている可能性がある」と発表したのだ。
この論文を探してみたところ、ノルウェー大学公式サイトにあるのマーティン・ワーグナーさんのページから発見しました。「消費者向けプラスチック製に使われる化学物質の脂肪生成活動」というテーマで、日常的に利用される34種類のプラスチック製品に肥満につながる成分があるかどうか検証したそうなのですが、カップラーメンの容器は含まれていないようです。
ヨーロッパではアジアほどカップ麺は食べられていないようなので仕方ないのかもしれませんが、、、。
結論としては、ほかのプラスチック製品では肥満につながる成分が確認されたものもあったそうです。
ただ、この研究は、カップ麺の容器が溶けて有害物質が溶け出す問題とは直接の関係はないように思います。
カップ麺にお湯をそそぐなど、普通に想定される用法で口に入る物質の影響を検証したのではなくて、プラスチック製品を人為的に溶かして、その成分の有害性を確認したという検証だからです。
プラスチック製品の有害性を証明するのであれば、次の3点の検証が必要になるのですが、マーティン・ワーグナーさんの研究は①のみです。
- プラスチック製品の成分の有害性を確認する
- どの程度のプラスチックが普通の用法で体内に入るか確認する
- 普通の用法で体内に入る量で健康被害が起きるか確認する
②がまだということは、研究結果の最後に今後の課題としてちゃんと書かれてあるのですが、NEWSポストセブンの記事はその部分が書かれていないので、過度に不安をあおる記事になっている気がします。
特にカップ麺は加熱が入るので、プラスチックが溶けていてそれが口に入っているというのは事実のようです。たとえ有害性がはっきり確認されていなくても、「危ないのであまり食べたくない」とは私も思っています。
だからこそ、実証済みの危険性、疑いがある段階の危険性はメディアにははっきりわけて書いてほしいなと思います。
それにしても、このくらいの話題しか出ないということは、問題になってから20年経っても、海外も含めてあまり研究は進んでおらず、注目度も低いようです。
ライブドアニュースの記事
ライブドアニュースにも2014年に、「【米国発!Breaking News】「カップ麺の容器は人体に悪影響」と米医療研究チームが改めて指摘。」という記事が掲載されています。
2014年とちょっと古いのでこの研究を探してみたのですが、なかなか見つかりません。カップ麺は普通に体に悪いので、容器の問題ではなくて、伝統的な食事と比べていかに健康に悪いかの研究の方が活発に行われているようです。
研究そのものの資料が見つからなかったのですが、この研究を報道したニュースによると、「ビスフェノールA」が問題になっているようです。
ビスフェノールAについては、量によっては悪影響があるので現在でも溶出試験規格が定められていますが、厚生労働省ではさらに基準を厳しくすることが検討されているそうです。
ビスフェノールAという化学物質は一部の食品用の容器等の原料に使用されています。飲食物に移行したビスフェノールAによる健康への悪影響を防止するために、これまでの各種の毒性試験に基づいてヒトに毒性が現れないと考えられた量を基に、ポリカーボネート製容器等について、2.5ppm以下※という溶出試験規格※を設けています。また関係事業者においても、ビスフェノールAの溶出をさらに低減させるための製品改良が進んでいます。
ビスフェノールAについては、近年、動物の胎児や産仔に対し、これまでの毒性試験では有害な影響が認められなかった量より、極めて低い用量の投与により影響が認められたことが報告されたことから、妊娠されている方(これらの方の胎児)や乳幼児がこの物質を摂取すると影響があるのではないかという懸念が持たれています。欧米諸国でも、このような報告から、ヒトの健康に影響があるかどうか評価が行われているところです。
厚生労働省でも、ビスフェノールAのこのような作用に対して以前より調査研究を重ねてきましたが、これまで入手した知見と併せて、ビスフェノールAが使用されている食品用の容器等について新たな対策が必要かどうかを検討するために、食品安全委員会に食品健康影響評価を依頼し※、今後、その評価結果を基に必要な対応を行うことといたしました。
厚生労働省
カップ麺から溶け出す成分が最初に問題になったときは、スチレンダイマーとスチレントリマーの危険性が指摘されていました。ビスフェノールAは工業用の用途がメインの「ポリカーボネート」に含まれるものだそうなので、また少し違う問題になってしまいますね。
日本のカップ麺はポリエチレンかポリスチレンが多いようなので、こちらもあまり関係なさそうです。
カップ麺そのものの方が危ない
今回海外の論文も調べてみた中で、「カップ麺そのものの健康被害」の研究の方が多いのが印象的でした。
見るからに体に悪そうですもんね、、、(笑)
容器もだんだん変わっていますし、容器の問題はあまり気にしなくてもいいのかもしれません。
カップ麺で問題になるのは、添加物と塩分です。
自然派企業がよく扱っているムソーの「ノンカップ麺」は、添加物的には問題ないですが、塩分の問題は同じようにありますね。
油揚げめん[小麦粉(小麦<国産>)、パーム油、馬鈴薯でん粉(馬鈴薯<国産><遺伝子組換えでない>)、 食塩、ホワイトペッパー、オニオンパウダー]スープとかやく[食塩、砂糖、チキンエキス、ごま、酵母エキス、デキストリン、 香辛料(大豆を含む)、ねぎ、魚醤粉末、ほたてエキス、乳糖、ごま油]
ノンカップ麺は、78.5gあたりの食塩相当量が4.4gです。一方日清のカップヌードルは78グラムあたり4.9gです。ノンカップ麺の方が1割くらい塩分が少ないですが、劇的な違いがあるわけではないですね。
もうこれはインスタント食品である以上仕方ないのかもしれません。
デパ地下・お取り寄せ食品大好きの姉が送ってくれた「鳥菜にゅう麺」が、私の知る限り一番マイルドな味に感じるインスタント麺なのですが、これにも66グラムあたり4.05gの食塩相当量が含まれるそうです。
ラーメンの重量を100グラムにそろえて比較すると食塩相当量はこのようになり、
商品名 | 食塩相当量 |
ノンカップ麺 | 5.6グラム |
カップヌードル | 6.2グラム |
鳥菜にゅう麺 | 6.2グラム |
実はカップヌードルと同じくらい入っていますね。